08. ニセコ、そして富良野へ。


 

 再び小さな公園で目を覚ます。昨日は一日雨が上がらず、一歩も公園から出ていない。

 

 今日も空は暗い。でも雨は止んだので、移動することにした。

 

 とりあえず、ニセコへ向けて出発。北海道のシッポを、内回りで走る。国道5号線は、北海道らしいと言えば北海道らしい道だ。巨大な砂山のような駒ケ岳を過ぎてからは、右手には原野越しに、内浦湾が臨める。単調な景色が、ずっと続く。

 交通量は多いが流れは良い。バイクを止めなければ、どんどん進める。

 

 おしゃまんべ、という響きだけが有名な長万部を過ぎると、交通量がぐっと減った。道も海沿いから離れ、山の景色である。

 



 

 

 

 そのうちに、前後にまったく車がなくなった。何度も走った道であるが、ここまで交通量が少ないのは初めてだ。空は相変わらずどんよりと低く、うつろな雰囲気。

 こういう景色は、嫌いではない。遠くに見えるはずの羊蹄山(ようていさん)に、大声で呼びかける。

 

 ニセコの山々のふもと、倶知安(くっちゃん)町には夕方前に着いた。「日本橋」という寿司屋で、ニセコちらしを食べる。北の海産物が十二種類も乗った、豪勢なちらし寿司である。

「おかわりしていいよ」

 とご主人が言ってくれたので、遠慮なくお代わりすると、寿司飯だけが盛られて帰ってきた。もう具はない。どうやって食えというのか。

 

 

 

 

 

 

 その日は町外れの旭ヶ丘公園キャンプ場にテントを張った。もうすっかりなじみのキャンプ場だ。

 ライダーの旅人はまだ少ない。お互いに軽く挨拶をするが、ふーすけが不気味なせいか、あまり近づいてくれない。寒いので、夜はテントから出ず、すぐに寝ることにした。

 

 

 

 

 翌日も、天気は悪かった。はっきり言って僕とふーすけは、ものすごい晴れ男、晴れガエルである。それなのに、北海道はどうなってしまったのか。

 

 ニセコの山に残雪がたくさん残っていたら、晴れるまで待って登ろうと思っていたのだが、雪はもうなかった。今日も移動することにした。

 

 出発の準備が終わると、ようやくここのキャンパーたちが話しかけてきた。すっかり話が盛り上がって、なんだか出発するのが嫌になってきてしまう。日本一周のときに、沖縄の与那国島で出会った「イヨマンテのジジイ」が、ちらりと姿を見せ、声をかける間もなくどこかに消えていった。あの歳で(と言っても年齢不詳)十年以上も旅を続けているとは、筋金入りの旅人だ。

 


 

 

 途中、雨に降られたりしながら走り続ける。やっぱり今日は移動しなければ良かったと後悔しても、いったん走り出してしまえば、そのまま走ってしまうものだ。

 

 支笏湖畔を過ぎて、千歳を越えて、夕張を越え、日高まで。とても寒い。後ろのふーすけは僕を風よけにしているので眠ったりしているが、僕はまるで冬の装備なのに震えてくる。

 

 日高のキャンプ場で今日のテントを張ろうと思ったが、有料だったのでまだ走ることにした。こうなったら、富良野まで行ってやる。

 

 震えながら狩勝峠を越え、やっと富良野へ。防大時代の夏休みに、石垣島で知り合った「四十万」の家に行く。今日はそのまま泊めてもらうことにした。 

 

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