北海道に行くのはこれで十一度目だ。一度だけ冬のキャンプをしに行ったが、あとは全部夏とか、夏から秋までの旅だ。今回の出発は六月十五日。一応、今までの北海道への旅では、一番早い時期の出発となる。
近所の人たちには、僕たちが何ヶ月も旅で遊んでくるとは知られたくないので、荷物やバイクは事前にふーすけの実家に預けてある。いかにも仕事で長期出張するかのように装って、僕たちは車で家を出てきた。
ふーすけの母の家で、僕の自慢のバイク、KLX650に旅道具を積む。ふーすけはバイクの免許など持っていないので、二人分のキャンプ道具である。
母と、母が孫のように可愛がっている仔猫に見送られて旅立ち。もう母も僕たちの旅には慣れっこで、心配するなんてこともない。それどころか、
「スッ転んで来ればいいだヮ」
と言って暖かく見送ってくれる。泣けてくるではないか。
出発が遅かったので、しばらくすると買出しをしていい時間になっていた。僕たちは旅の間もけっこうまともな食事をしているので、たいてい毎日夕方ごろにはスーパーに寄るのだ。
ふーすけは、旅先のスーパーで買い物をするこの時間が一番好きなようだ。旅自体に興味があるのかは分からない。バイクのタンデムシートではいつも寝ているし、きれいな景色を見ても、
「きれいね」
とか言ったことがない。
買出しから少し走ったところで、テントが張れそうな河原を発見。まだ出発地の長野県さえ脱出できていないのに、僕たちはテントを張ることに決めた。と言うか、もう夕方である。
背の高い草にはさまれた、河原までの砂利道を降りていく。視界が開けると、そこはテント地にはもってこいの場所だった。旅の出だしはいい感じである。
ちなみにこの日の夕食は
カルビ焼き
野菜炒めスープ
きゅうり
米
そして日本酒。