旅の道具 以前の撮影機材



 

  ニコン F801            ミノルタ α9000

  
              
 
カメラを持たずに旅をする人間はごく少数派だと思うが、どのようなカメラを持っていくかは、それこそ千差万別だろう。    
僕が野宿の旅を始めたころに持っていったのは、京セラかどこかのコンパクトカメラだった。それまであまり写真に興味がなく、
「一応持っていくか」という気持ちくらいだった。

 

 ところが自分の撮った写真を見ているうちに、もっといい写真が撮りたくなってきた。そしていい写真を撮るならば、
一眼レフが必要であると考えた。自分の作為を写真に働かせるには、なにやらいろいろと秘密の詰まっていそうな大きなカメラでないと

駄目なのだろうと思ったのだ。

 

 最初に買った一眼レフは、ニコンのF801だった。レンズは28-85mm一本。レンズ交換ができることが一眼レフ最大の
長所らしいが、レンズを何本も買う金がなかったし、持ち歩くのも嫌だったから、ずっとその一本で旅をした。

 

 一応、28mm以下が広角と呼べるレンズだと僕は思っている。そして旅では望遠側は85mmあれば充分で、それ以上の
望遠がないからといって悔しい思いをしたことはほとんどない。逆に、もっと広角のレンズが欲しくて悔しい思いをしたことは
何度もある。それでも当時、28mm以下の広角からの標準ズームレンズはなく、そこが一つの画角の区切りになっていた。
それ以下の焦点距離のものだと、広角専用のズームレンズしかなく、それは恐ろしく高価だった。

 

 日本一周の旅の途中でF801は壊れて、僕はミノルタのα9000に買い換えた。これはその時代の一眼レフには珍しく、
手動でフィルムを巻き上げるカメラだ。その感覚も、シャッターボタンを押したときの「パシャン」という音も心地よくて、
かなり気に入って使っていたのだが、これも旅の終わりのほうで壊してしまった。

 

 その後、一ランク下のα7000を中古で買ったがどうしても気に入らず、僕はまた中古のα9000を買った。ズームレンズにも
28-200mmというすごいのがタムロンから出てきて、それを装着して使っていたが、これはスキー場で盗まれてしまった。

 

 そうして次に買ったのが再びF801である。中古で四万円だったから、修理代金よりも安い。しかも旅で酷使している自分の
カメラよりも、よほど程度がいい。この機種の最大の長所はセルフタイマーが2~30秒可変式だったことで、自分の姿を撮ることの
多い旅写真では、とても重宝した。しかし30秒ではどうしても短いときがある。

 

 一方、ミノルタのカメラでの長所は、リモコンが使えることだった。60mまで有効なワイヤレスコントローラーが一万円台で買えた。

これは他のメーカーにはないか、あっても一桁上の値段だ。特にバイクで走っている写真や、カヌーを漕いでいる 写真を撮るとき、

リモコンは大変に便利である。

 

 そのうちに、24-85mmが各メーカーズームレンズの標準になり、僕はミノルタのレンズと、一万五千円で買った三台目の
α9000を使うようになった。すでにかなり時代遅れのカメラではあったが、一眼レフとしては小型で軽量のボディ、必要以外の
余分な機能がついていないシンプルさが好きで、ずっと使い続けたいと思うほどだった。

 

 それでも旅でのべ半年ほど使うと調子が悪くなり、僕は思い切ってミノルタ最後の最高級機種、α‐9を中古で買った。
中古でも十万円以上で、そんな金を出してカメラを買ったのは最初のF801以来だった。最初のα9000は新品だったが、
沖縄のカメラ屋でなぜか五万五千円のしかもレンズ二本つきだったのだ。ちなみに新品ボディ価格は125000円である。

 

 さて、せっかく大金を出して買ったα‐9だが、いまだ実働は一ヵ月もない。あまりにデカくて重くて、持ち歩くのに辟易として
しまったこともある。それから、絵のような写真しか撮れなかったデジカメが意外と早く進化して、一応写真らしい写真を撮れる
ようになったため、僕もついにデジカメを買ってしまったこともある。

 

 かくして僕の銀塩一眼レフ遍歴も、おそらく終わりを迎えただろう。画質では圧倒的に銀塩のほうが良い味を出しているが、
デジカメの便利さには勝てない。(と思っていたが、いまやこの「味」さえも、高級デジタル一眼ではかなり良くなってきている!)
そもそもせっかくいい写真を撮っても、保管が大変でどうしても劣化し、見返すことも面倒で、スキャンするのも面倒な銀塩写真*1は、
結局「あってもなくても同じ」になりやすい。なにしろ記憶よりも美しい写真など、一枚も存在しないのだから。

 

      *1 一般的に言うフィルムのこと。あるいはそのプリントしたもの。 

 


ワイヤレスコントローラー IR-1Nセット    ミノルタ α‐9



 キヤノン PowerShot Pro1


 8メガピクセルCCD。Canon Zoom Lenz L  7.2-50.8mm(35mm換算28-200mm) 1:2.4-3.5 7倍ズーム。
2005年ヨーロッパ三ヵ月の旅で使用。2008年二度目のヨーロッパ三ヵ月の旅にも使用したが、途中で故障し、
なぜか数日後勝手に故障は直ったが、EOS40Dを日本から送ってもらったこともあり、ほぼ使用せずに持ち歩いた。


 一見小型の一眼レフに見えるが、コンパクトカメラである。よってレンズ交換はできないが、28-200mmあるので、
一応満足のできる画角をカバーしている。僕としては望遠はそれほどまでなくていいから、広角側をもっと欲しかった。
24mmと28mmでは全く違う。素人(僕もプロではないが)はどうしても望遠側を欲しがる傾向が強く、メーカーも
そういったレンズの開発に努めることになる。もっとも、このサイズのデジカメで24mmのレンズをつけるのは技術的に
相当難しいのだろう。今もって24mm搭載のハイエンド・コンパクトデジカメは存在しないようだ。(※現在は普通にある)


 で、サイズであるが、一般の一眼レフに比べて二回りほど小さい。本体重量は545gで、これも一眼レフよりも当然軽い。
それでも一眼デジカメの小型化は年々進み、画質もどんどん向上してきているから、今の時代でこのようなハイエンド・
コンパクトカメラの存在意義はなくなってきつつある。


 そうなるとこのカメラの長所は、小型だがキヤノンの最高級レンズにしか使われていない蛍石レンズ*2を採用した
キヤノンLレンズを搭載していることだろう。だが、デジカメの場合は撮像素子とか画像処理プロセッサーなどの性能でも
画質が左右されるから、良いレンズを搭載しているからといってすなわち綺麗な写真が撮れるとは限らない。


 旅で使うに当たっての最大の長所は、10秒対応のリモコン機能と(といっても有効距離が5mほどでは短すぎる)、
インターバル撮影機能だ。高級一眼レフでさえ、「自分を撮る」機能はおまけ程度にしか考えられていないために、
リモコンの設定が2秒だったり、インターバル撮影機能がないものがある(本来インターバル撮影機能は自分を撮るため
のものではないが)。セルフタイマーの10秒だけでは、どうしても撮れない構図や距離の写真があるものだ。このあたりは
各メーカーとも、もっと真剣に考えて装備して欲しい。セルフタイマーを使うのはカメラの前に「気をつけ」をして写る、
家族写真を撮りたいお父さんだけではない。風景の中に自分を写したい旅人はプロでも素人でも大勢いるはずだ。


 あと、各種フィルターが取り付けられるところと、バリアングル液晶モニターも良い。液晶の画素数は23.5万画素で、
このクラスでは最高精度。JPEGで撮った写真を、撮影直後ならばRAWに変換できる機能も良い。


 一方、超音波モーターによるズームは必要なかった。これは手動ズームのほうがよほどいい。こんなところで構造を
複雑にしたり、重量を増やすべきではなかった。

  

 画質のほうは、僕は専門家ではないので詳しいことは言えないが、大きさのわりには充分に納得できるものである。
一眼レフ(EOS40D)と比べても、晴天時の写真など、かえってこちらのほうが綺麗に写っていることさえ珍しくない。
ただし、感度を上げると画質の荒さが目立ってくる。せいぜいISO200までが実用域で、これは現代のデジカメ性能としては
不十分すぎる。また、手ブレ補整機能がついていないので、三脚の使用が禁止の薄暗い場所の撮影では、1/8秒くらいが
ブレの目立たない写真の限界となる。撮影技術のない人では1/60秒以下でもブレることがある。望遠ならばなおさらだ。


 撮像素子は2/3型CCD。一般のコンパクトカメラに比べれば大きいが、一眼に比べると小さい。明るい昼間の撮影では
画質の差が出なくても、夕方や夜、薄暗い場所での撮影では差を感じるだろう。もっとも、画像処理ソフトである程度は
カバーできるが、そういう処理はけっこう面倒くさい。一眼レフで一般的な撮像素子に比べて縦横比が少ない(正方形に近い)ので、
ブログなどで規定があって横幅を同じサイズに表示したときは、より大きく表示されて見栄えがいい。


 映像エンジンが「DIGIC」*3なので、撮影後の処理が遅いし、起動も遅い。ヨーロッパの旅では列車の窓からの写真も
よく撮ったが、起動や動作の遅さゆえに、撮りたい風景を撮り逃がしたことがしばしばある。


 バッテリーフル充電での撮影可能枚数はカタログでは420枚だが、実際に撮影後のチェックをしたりセルフタイマーを
多用したりすると、100枚ほどである。気温が低ければもっと少なくなる。充電時間は90分で90%。これは全てのメーカーの
中で最速だが、フル充電するにはさらに一時間必要とのことで、表記的に問題があるのではないかと思えてしまう。


 2005年、僕は初め3本のバッテリーを持って行ったが、山に登ったりすると足らなくて、そのために苦労をした。
旅の後半では一本追加して4本持ったが、それでも不十分だった。2008年では6本のバッテリーを持っていき、
最終的には8本を持ち歩くことになった。充電器も途中で一台追加して、3台持ち歩いた。


 現在はすでにラインナップから外され、たとえばキヤノン純正のフォトストレージにさえ対応していない。
メーカーは過去の製品に対して、どんどん切り捨てていく態度なのだろうか? 一度デジカメの機種を決めてしまうと、同メーカー
でもバッテリーの形状が違っていたりして、おいそれと買い換えられない。
    

      *2 蛍石は光学ガラスに比べて低屈折率、低分散特性がある。キヤノンのものは人工結晶の蛍石。
      *3 キヤノンの映像エンジン。その後改良されたDIGIC 2、さらにDIGIC 3、DIGIC 4が出ている。




 

 キヤノン EOS40D  EF-S 17‐85mm F4‐5.6 IS USM

 

 約1010万画素CMOSセンサー(APS-Cサイズ、有効撮影画角はレンズの表記焦点距離の約1.6倍相当)。
 映像エンジンDIGIC3。14bit信号処理。ISO100~1600に対応(3200に設定可能)。
 シャッター速度1/8000~30秒、バルブ。セルフタイマー10秒後/2秒後撮影。最高約6.5コマ/秒。
 液晶モニター3.0型23万ドット。本体質量約740g。145.5(幅)x107.8(高さ)x73.5(奥行)mm。

 レンズ構成12群17枚。質量475g。35mm判換算で27-136mm相当の画角。手ブレ補正機構つき。

 

 上で紹介したPro1が、旅の途中で調子が悪くなってしまったため、急遽日本からノルウェーに送ってもらったカメラ。
もともと旅に出る前から気になる存在ではあったが、ショップで実際に手にしてみると、あまりのデカさ重さに買う気が起こらず、
この性能でもっと小さなサイズになるまで買わないと思っていたのだが、図らずも?入手となったわけだ。

 

 僕はこのカメラは上級機の一種だと思っていたが、実は中級機らしい。昔と違って、今や30万円台でも安いと言われるのが
上級機で、プロ機となればその二倍出しても買えない値段だ。ちなみにこれは二万円のキャッシュバックもあり、レンズセットで
10万円ほどで買えたらしい。らしい、と言うのは、日本にいる女房が買ったからで、外国にいた僕が払ったわけではないからだ。

 

 それにしても、近頃の中級機以上のデジタル一眼レフは、ますます大きくなる傾向にあるようで、全く小さくしようとする努力が
見られないどころか、大きいほうが良いとでも考えて開発しているのではないかと思えてしまう。ネットの評価などで見るユーザーの
声も、「これくらいのサイズ重さがちょうどいい」などと言うものが少なからずあり、では銀塩カメラのときはほとんどの機種が
その人たちにとって、小さくて軽くて仕方がなく感じていたのだろうかと疑う以上に、驚嘆の意見であった。

 

 カメラなど小さくて軽いに越したことはない。プロは別として、そして自分のカメラを他人に見られて自慢したいだけのマニアも
別にして、デカくて重いカメラを持ち歩くのは好まないはずだ。だから初級機はどんどん「軽く小さく」が目指されているわけだ。
そして初級機の機能では満足できない人が中級機を買うのであり、大きく重いカメラがほしい理由で中級機を買うのはよほど
変わった人だろう。

 

 僕がこのカメラを選んだ最大の理由は、それまで使っていたPro1とバッテリーが共通であることだ。

決して安くはない(むしろ高い)バッテリーをすでに6個も持っているのである。それを無駄にはしたくなかった。

 性能として、一番問題なのが撮影画像を確認するモニターだ。ピントが合っているかを確かめるために拡大するとボケた画像になり、
ピントが合っているかどうかまるで分からない。

これは多分クレームが多かったようで、50Dからは高精度のモニターが搭載されている。


 撮像素子のダスト除去機能はあまり有効に活動していない。使っているうちに付着したダストが、特に絞りをきつくして撮った画像中に
黒点となって記録される。青空の部分などでは多数目立つことがある。これも50Dからはフッ素コートが採用され、改良されている。

 

 レンズのズームリングはキヤノンの伝統なのかゆるゆるで、持ち歩いているうちにいつも勝手に伸びきった望遠側になっている。
それで困るのはその際に鏡筒部に付着した埃が、広角側に縮めたときに鏡筒内部に侵入して、レンズ面の取れないゴミとなることだ。
二ヵ月の使用で買い換えようかと思ったほどゴミだらけになった。キヤノンのサービスセンターに持って行ったが、保証修理の対象には
ならないと言う。なぜこんなに緩いズームなのかと聞くと、そう望むユーザーが多いとのこと。本当だろうか? ゆるゆるのズームは
高級感がまるでなく、安物のおもちゃを触っているようだ。他社のズームレンズはもっとしっかりとした操作感で、滅多に埃も入らない。

 

 結局レンズの問題は、購入したショップ経由で無償対応してもらった。ゆるゆるのズームは多少固くなって帰ってきて、勝手に伸びたり
しない程度になったが、相変わらず埃は入るし、まただんだんと緩くなってきている。

 

 撮影画像は、風景モードとPLフィルターを併用すると、時として効果が高すぎて濁った感じのものとなる。背面の液晶モニターでは
そのようには見えないので、パソコンのモニターとの相性もあるかもしれない。RAW画像ならば付属ソフトである程度の修正が可能。
風景モードの仕上がりは、富士のリバーサルフィルムベルビアみたいで、ものすごく濃い色。人によっては嘘くさいと言うだろう。
どんな写真でも、実際に見た以上には美しくないので、僕としてはそういう演出効果の高い写真のほうが好みである。

 

 いろいろと問題も多いカメラだが、不思議と満足度は低くない。過去に使ってきたカメラと比べて圧倒的に便利であるし、パソコンの
モニターで見る写真も綺麗だ。結局、カメラとはできあがった写真が綺麗であることが第一条件で、本体自体のあれこれは二の次と
いうわけだ。それでももちろんカメラ自体に価値がなければ、良い写真を撮ろうと思う気持ちは湧いてこないものだ。

 

※2015年現在、このカメラを振り返ってみると、性能はかなり低かったと言わざるを得ない。

 画質(描写)の甘さ、悪さ。大量のピンボケ写真製造機。レンズ性能も悪かった。

 もちろん、当時のデジカメなどみな似たり寄ったりの性能で、このカメラが特別に悪かったわけではないだろう。

 また、いつの間にかキヤノンでは二ケタ台のシリーズは初級機扱いになっている。




 

 キヤノン EOS7D & EF-S15-85mm F3.5-5.6 IS USM

 

 約1800万画素CMOSセンサー(APS-Cサイズ、有効撮影画角はレンズの表記焦点距離の約1.6倍相当)。
 映像エンジンDIGIC 4を二機搭載。14bit信号処理。常用感度 ISO100~6400。オールクロス19点AFセンサー。
 シャッター速度1/8000~30秒、バルブ。セルフタイマー10秒後/2秒後/リモコン撮影。最高約8コマ/秒。
 約100%ファインダー。動画撮影機能(1920x1080 Full HD、1280x720 HD、640x480 SD)。 
 液晶モニター3.0型92万ドット。本体質量約820g。148.2(幅)x110.7(高さ)x73.5(奥行)mm。

 レンズ構成12群17枚。質量575g。35mm判換算で24-136mm相当の画角。手ブレ補正機構つき。


 上記の40Dよりもさらに重くなり、レンズと合わせて180グラムの差は、手にとってすぐに違いが分かるずしりとした重さだ。
いったいこんなにデカくて重いカメラをなぜ買ってしまったかといえば、ホームページやブログの写真を読者に誉められて、ちょっと
調子に乗ってしまったところもあるし、それ以上に、本当に上手い人の写真を見て、自分ももっと真剣に写真を撮りたいと感じたためだ。
  
 40Dで挙げた数々の欠点は全てクリアされていると言っていい。モニターの精度は圧倒的に上がって、きちんとピント確認ができる。
撮像素子のダスト対策が向上し、北海道四ヵ月間の旅で使っている間、ダストが気になったことはない。ただそれは、僕が以前よりも
絞りをきつくして撮影しなくなったことにもよるだろう。絞り込んで青空などを写せば、ダストが現れるに違いない。
撮影画像はピクチャースタイルの選択や設定にもよるが、派手すぎる発色がなく、一見物足らないが、より玄人好みと言えるのだろう。


 レンズのズームリングは相変わらず緩くて、使っているうちにますます緩くなり、ある程度下を向けると勝手に伸びてしまい、
画角を保つことができない。クレームで無料修理させて現在は解決しているが、そのうちにまた緩くなるのは明らか。


 それ以上に、ボディは簡易防塵防滴なのに、このセットレンズがそれらに対応していないのが納得できない。
ボディとレンズ、どちらからの浸水か分からないが、旅のあとに点検に出したら、かなりボディ内部に水がたまっていたようで、
高い修理代金を請求されてしまった。旅では過酷な自然条件下での撮影もあるため、ぜひともEF-Sレンズも防塵防滴処理をしてほしい。


 このカメラを手にして、最も僕が変わったのは写真撮影のスタイルではなく、技術やテクニックでもなく、動画機能があることにより、
動画撮影を始めたことだ。入手前はたまに使うか使わないかくらいの「おまけ」機能にしか思っていなかった動画撮影機能が、
使い始めると写真以上に面白く、すっかりハマッてしまった。

もっとも写真はある程度真剣に撮るが、動画はまだ遊びの域を超えていない。
そもそも旅をしながら自分で自分の動画を撮るのは、写真以上に時間がかかるし面倒なことだ。


 一応上級機であるし、ボディは造りもしっかりしているので、レンズさえ良くなればかなりいい。僕としては水中に沈めても、
岩に叩きつけても壊れない一眼レフがほしいが、そういうのは未来永劫できないのかもしれない…。




 

 パナソニック LUMIX ステレオマイクロホン DMW-MS1

 

 単四電池一本で使用時間500~1000時間。単一指向性(ステレオ)/無指向性(モノラル)切り替え。
 周波数特性 100Hz~20000Hz。感度-47dB。S/N 67dB以上。2.5mmL型ステレオミニプラグコード。
 本体67.5g。47x55x158mm。販売価格一万円ほど。


 EOS7Dの動画撮影用に買ったマイク。不思議なことにキヤノンからはデジタル一眼レフ用のマイクが発売されていないため、
パナソニック製品を買ったが、ジャックが2.5mmなので、別に3.5mmの変換アダプターが必要になる。


 マイクに関しては全くド素人だし、これ以外に使ったこともないので、性能の良し悪しに関しては一切分からない。
内蔵のマイクを使うよりは音が上品な気がするが、集音性に関して特に差が有るようには感じない。内臓マイクはモノラルなので、
ステレオで録音できるのはいい。また、風切り音が内臓マイクだとひどいが、WIND CUTがこの製品にはついているので、
風がある場合の録音には有効である。


    



 

 SLIK PROシリーズ[A.M.Tシリーズ]プロ250DX2

 

 高さ1470mm/1160mm。フル開脚時高さ460mm/(260mm)。携行時490mm。
 最大パイプ径23.4mm、4段。質量1450g。3WAY雲台。定価20475円。実売価格12000円。
 ヨーロッパ三ヵ月の旅に二度、北海道四ヵ月の旅、計十ヵ月使用。


 Pro1用に買った三脚。一眼レフ(EOS40D、EOS7D)でも充分に使用できる。ただし、普段三脚を使わない一般の人からは
「そんな大きな三脚がいるのか?」と驚かれ、プロからは「そんな小さな三脚で大丈夫か?」と心配されるだろう。
まあ三脚とはそんなものである。必要ない人には一生必要ないし、プロにとっては絶対に必要なものだ。
動画撮影において、雲台をスムーズに回転させるのは難しい。ビデオ撮影にはやはりビデオ三脚のほうが良さそうだ。


 僕は長年、三脚に大した金を掛けてこなかったが、そのために壊したカメラやレンズはけっこうな数になる。
これは初めて一万円を越えて買った三脚だが、三脚としては安価な部類だろう。それでも一万円以下の三脚とは
雲泥の品質の差がある。安い三脚はどうしても雲台がガタついてくるが、これは構造的にガタつきが生じない作りになっている。
だがハードな使用のために、エレベーションと回転を担っている部位の締め付け力が少し弱くなってきた。


 首の回転や伸張のための調節ネジは、勝手に緩んで脱落しやすいので、ドリルで穴を開けてプラスチックコードで
本体に繋いでいる。大きく回転させなくても充分に緩むので、これはぜひやっておきたい処理だ。雲台のハンドルには
脱落防止対策を施してないが、かなりネジが長いので、脱落の可能性は比較的低い。


 僕の旅では、山を歩いたりするときは三脚をつけたカメラを常に持つことになる。銀塩一眼レフを使っていたときは
3kg近かったが、Pro1とこの三脚ならばほぼ2kgジャストなので楽になった。逆にEOS40D以降は重量が増え、
自動小銃並みのものをいつも持って歩いていることになる。




 

 飛鳥 Trippermini 40GB

 

 メモリーカードにたまったデータをコピーできるフォトストレージ。CFカード専用。本体205g。
 ヨーロッパ三ヵ月の旅に二度、延べ六ヵ月使用。


 これがなければ、メモリーカードを多量に持つことになって不経済になる。40GBは、2005年のヨーロッパの旅では
ぎりぎりの容量だった。RAW、JPEG入り混ぜて約6000枚の8メガピクセル画像と、250本の30秒動画である。


 現在では撮った画像が液晶画面で確認できるものが主流。本体は小型だが、充電器がかさばるし、付属コードが長すぎる。

本体を多少大型にしても、充電器を介さずに直接充電できるタイプにして欲しかった。


 次第にバッテリーの持ちが悪くなってきて、頻繁に充電が必要となったが、トラブルは皆無だった。


※記録メディアのカードが大容量になり、安価になった現在では、全く必要のない製品である。




 

 キヤノン メディアストレージ M80

 

 キヤノン製のフォトストレージ。容量80GB(74GB)。対応メモリーカードはCFカード(TYPE I、II準拠)(8GBまで)、

 マイクロドライブ、SD/SDHCメモリーカード、マルチメディアカード。

 3.7型TFT式カラー液晶モニター 約30.7万画素(640x480ドット)。
 表示可能静止画JPEG形式、RAW形式(キヤノン製品のRAWファイルのみ。Pro1非対応)、TIFF(TIFF?RGB)形式。質量370g。


 Pro1からEOS40Dに替えたことで、一枚あたりのファイルサイズが大きくなり、上の飛鳥製40GBでは三ヵ月分の旅の写真が
保存できない可能性が高かったため、日本からイタリアまで送ってもらったもの。バッテリーがカメラと共通なのが購入した理由。


 ところが使用して十日ほどで、バックアップの最中でフリーズしてしまい、何をやっても駄目で、仕方なくバッテリーを抜いたところ、

ファイルシステムが壊れ、使い物にならなくなっただけでなく、保存していた画像までが取り出せなくなってしまった。


 イタリアからキヤノンに国際電話を掛けて対策を要請したが、まともな対応はいっさいなく、ただ莫大な電話料金と数日を無駄にした
だけで終わった。かつてPro1のことで問い合わせ電話をしたときに対応してくれた人はとても親切丁寧で、そのことによって

キヤノンが好きになっていたのだが、この件ですっかりイメージを悪くした。

たとえ一人か二人対応の悪い人間がいただけでも、企業のイメージはずいぶん悪くなるものだ。


 日本に帰ってからは当然無償修理となったが、結局データまでは取り戻せなかった。約千枚ほどの写真が消えたことになる。
データ復旧会社にサルベージの見積もりを出してもらったところ、重度の物理的破損で30~40万円掛かると言われ、あきらめた。


 以上により、この手の機械には全幅の信頼は決して持てないことが分かった。費用はかさむが、CFカード等のメモリーカードを
必要な容量だけ何枚だろうが買って持っていくほうが安心できるだろう。旅先でDVDに焼いてしまえばより安心できるが、自分で
パソコンを持ち歩かない限り、面倒だ。あるいはネットカフェでできるのだろうか? 僕の旅では都会はまず行かないからだめだ。
メモリーカードからその場でDVDに焼くことができる小型軽量の機械を、どこかのメーカーが作ってくれることを望む。


※これも現在では全く存在意義のない製品である。