小さな公園で目覚めた。昨晩、ラーメン屋を離れてから空き地を探したが、あたりはすでに完全に暗くなっており、こんな場所しか見つけることができなかったのだ。
つまり、いかにもオヤジが「いい場所」と紹介してくれそうなところに、自分で選んでテントを張ったことになる。あるいは素直にオヤジに教えてもらっていたほうが、もう少しまともな場所にテントを張れていたかもしれない。
とは言え、町外れの公園、しかも雨なので、人の姿はない。前の道を時々、人が歩いていくのが木立越しに見えるが、僕たちのテントに気づく様子はない。
雨の日は走らない。濡れて走っても面白くないし、景色も悪い。そもそも予定なんてものは何もないし、北海道にさえ着いてしまえば、急ぐ旅でもない。僕はただ、六月の北海道を味わいたかっただけなのだ。
しかしずっとテントの中にいるのも退屈なものだ。僕たちのテントは山岳用の四人用テントだが、荷物と僕とふーすけとで、ほぼいっぱいである。山岳用テントの人数表記を信じてはならない。バイクの旅なら、一人旅でも、最低二人用テントを使うべきだ。三人用なら間違いないだろう。
ずっとふーすけは眠り続けている。僕は本を読む。バイクツーリングの小説だが、あまり面白くない。傘をさして、公園をうろうろしてみたりする。
昼過ぎになり、ようやくふーすけが起きた。ラーメンとパンの昼食。食料は最低一日分は持ち歩いている。
昼飯を食うと、またふーすけは寝てしまった。僕は退屈な小説を読む。
夕方ごろ、再びふーすけが起きた。なにやら、いきなりせっせと働き始める。何をしだしたかと思ったら、糸くずとか、紙切れを、手当たり次第にねじりあげている。
次いでろうそくを刻んで、鉄の小皿にばら撒き始めた。ストーブ(携帯コンロ)の火にかけて、溶かしている。
そこに先程ねじりあげた紙切れなどを突っ込んで、首をひねっている。
今度は包丁を持った。グリーンアスパラを手にすると、根元のほうを細切りにして、それをまた溶かしたろうそくに突っ込んでいる。
「なにしてんだよ」
尋ねると、ふーすけは不気味にニヤリと笑った。
「見たまま。ろうそく作ってんの」
アスパラの芯で、ろうそく?