夏の翼 登場人物紹介

 

羽村 海 (はむら かい) 

 

物語の主人公。毎夏のように北海道を長期旅している旅人。

一年半をかけた日本一周の旅の経験がある。

 

ライダーだが単にオートバイで走るだけの旅はせず、積極的に歩いて

本物の自然の中に入っていくことを喜びとしている。 

 

北海道を旅する旅人やキャンパーの中でも抜群の行動力があり、

物語の年は比呂美から借りているカヤックで、ますますその行動範囲を

広げている。 

 

旅や人生に対して自分独自の哲学を持ち、深い精神面を見せる一方で、

子供のように無邪気な言動をしたりして、矛盾だらけの性格という印象

を与える。だがそれでいて一つの完全なる個性を発揮しているのが、

この男の不思議さである。 

 

北海道を長期旅する人間には珍しく、キャンパーネーム(注)がない。

誰からも本名の海(かい)、あるいはカイと呼ばれているのは、一つの

イメージだけでは言い表せない人間性の証明かもしれない。

比呂美からは秘かに最高の旅人と思われている。 

 

女性に惚れやすい面もあるが、どこまで本気なのか分かりづらい。

優里に対しては本気で好意を抱くが、優里の自由を尊重して束縛を

避け続ける純粋さがある。 

 

  (注)キャンパーネーム:旅人同士がお互いにつけるあだ名。

 


城野 優里 (しろの ゆり) 

 

もう一人の主人公。単独で日本一周の旅をしている最中に海(かい)

出会い、後日再会したときからともに北海道を旅するようになる。

 

性格を一言で表せば、「面白い」女。 

ただし、冗談を連発したり、おどけた行動をするという意味での面白い

ではない。自由自在の行動と精神で、常に周りにいる人間を魅了すると

いうことである。

もっとも、たまにおかしなことを言ったり奇妙な行動をしたりもする。 

 

空手二段、合気道三段で、かなり武道の真髄を体得している。

普段は女性らしく、時に花に話しかけるなど少女的な面さえ見せるが、

いざというときには男顔負けの精神や力を発揮する姿は、比呂美に

「芯は日本刀のような女」と評される。

 

歌がうまく、泳ぎも得意。常に理想の自分になることを目指しており、

理想の巡り逢いの相手を捜している。

 

時折、正体不明の悲しみを心の底に感じることがあるようだが、決して

その感情に支配されることはなく、常に明るく楽しいポジティブな性格

の持ち主。 

 

外見は、比呂美以外の人間からは、美人や綺麗と認められている。

(かい)を気に入っているようだが、決して直接な態度は見せない。

 

比呂美からは「人魚女(にんぎょおんな)」というキャンパーネーム

つけられて、いつもからかわれたりしている。


長尾 比呂美 (ながお ひろみ) 

 

脇役を超えて、副主人公とも言える重要人物。

ライダーだが、物語の年はカヤックを運ぶために、車で旅をしている。 

 

(かい)とは旅で出会った数年来の親友であり、北海道では海(かい)

一緒に旅をしたり、離れて一人旅をしたりしている。

『遙かなる岬へ』にも登場しているキャラクター。

 

オカマ言葉を使ったり女装するのが趣味。普段から奇妙な行動が多い。

 

人によって違うキャンパーネームで呼ばれ、海(かい)からはタガメ、

優里からはヒロちゃん。

 

多少女性蔑視の面があり、言葉遣いも普段は乱暴な雰囲気があるが、

根底は優しい性格であると海(かい)や優里からは思われている。 

 

なぜか優里のことを常にライバル視して、張り合う場面がある。

徹底的に道化を演じることもあれば、いきなり真面目になったりして、

後半までつかみどころのない人物として物語に味をつけている。

 

美姫ネエ (みきねえ) 

 

(かい)の初恋の相手。

登場場面は少ないものの、物語では非常に重要な役目を担っている。

 

(かい)よりも五歳年上で、恐ろしいほどの美人。性格は我がままで、

じゃじゃ馬で、自由奔放。

それなのに多くの人を魅きつけるものを持っている。

やはりライダーであり旅人である。 

 

比呂美が唯一崇拝する女性で、その外剛内剛の性格は「ダイヤモンドの

ような女」と評されている。

 

ストイックなまでに理想の自分を作り上げることを目指しているが、

どこかに危機感を覚える面がある。が、これは海(かい)が語る中での

ことで、物語としては直接描かれていない。

 

もっとも、海(かい)が語る美姫ネエとの話は、その後の展開に大きく

影響を与える。

  


ガーラ 

 

おどけた性格の女性キャンパーで、いつも周囲に笑いを振りまいて

いるが、比呂美に片思いの恋心を抱き、そのことで悩んでいる。

 

キャンプ場に長期滞在して農家のアルバイトをしているので、海(かい)たちとはあまり一緒に行動できない。

(かい)とは二年前からの知り合いで、何でも話せる友人。

ただし物語の年では優里に夢中になっている海(かい)からは、ほとんど

放ったらかしにされている。 

 

知り合った当時はまだ綺麗と言ってよい外見だったらしいが、今は多少

太ってしまい、髪形もてっぺんで縛ったパイナップル頭で、本人自ら

道化役に徹している。 

 

バイオリンを持って旅をしており、冗談なのかレパートリーは三曲しか

ないということだが、それなりに弾きこなす。

ギターを持って旅をしている鳥沼キャンパーのクリーム君と一緒にいる

ことが多く、周りからはクリーム君とカップルと思われることも多い。

 

憎めないキャラクターだが、意外と女としての一面をかいま見せたり

することがある。

 


 

 

 

ここでの登場人物紹介は、主に物語前半までの性格・特徴を書いています。

物語が進むにしたがって、それぞれの登場人物たちは次第に成長していき、

また違った面も見せるようになっていきます。

どのように彼らが変わっていくかを見てゆくのも、この物語の楽しみの一つ

だと思います。 

 

 

また、この他にも、実在の旅人やキャンパーをモデルにした登場人物たちが

たくさん出てきます。

『夏の翼』は単なる小説を超えた、リアルな旅の体験記でもあるわけです。